下水管点検DX、新たに管構造と損傷可能性をAI抽出で

老朽化や損傷による機能不全のリスクが高まっている。日本の下水道インフラは管路の点検が急務だ。近年、点検費用・時間を抑えるため、スクリーニング調査にて広範囲を迅速に簡易点検し、損傷の可能性がある箇所のみを詳細調査することが主流になっている。

同調査は、一般的に、管内を走行するカメラ搭載機器の撮影動画を熟練技術者が事務所等で目視点検するもので、慢性的な熟練技術者不足のもとでは省力化・省人化が課題だという。奥村組ジャストは、下水道管路の調査を効率化できるソフトウェア「スマカン」にその拡張機能として共同開発した「管構造抽出AI」と「損傷可能性抽出AI」を実装した。これにより、スクリーニング調査の点検精度を確保しつつ作業効率アップを実現できるという。

「スマカン」は、広角展開式カメラで撮影した下水道管路内の動画を帯状の画像にする「展開画像の作成」から、熟練技術者による「点検・損傷判定結果の入力」、「調査報告書の出力」までをワンストップで行える。同ソフトウェアに画像から物体や損傷を抽出する上記2つのAI機能を装備した。

「管構造抽出AI」は、点検結果入力の際に、管と管の接続部(ジョイント)や本管と汚水桝の接続部である取付管の位置を展開画像から自動抽出する。一方、「損傷可能性抽出AI」は、損傷の可能性がある箇所を自動抽出するもので、視覚的に分かりやすいように損傷可能性が高い箇所ほど濃い赤色で表示する。

今回の新機能を実装した「スマカン」を活用することにより、これまで目視確認していた取付管の位置や損傷箇所を自動抽出して、点検作業の効率化につなげられる。熟練技術者の配置が不要となる。損傷箇所を特定する作業時間(ダブルチェック含む)は、従来手法と比べて48%削減できるという。両社は、管路内部の点検における「スマカン」の活用場面を増やすとともに、AIの高度化を図り、さらなる効率化を目指していく構えだ。