心電図のみで糖尿病予備軍を発見、ウェアラブル端末での応用へ

過体重や肥満に伴う2型糖尿病は世界的に増えているが、その予防は容易ではない。糖尿病は自覚症状のないまま進行し、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患、失明や腎不全といった重篤な合併症を引き起こす――

医療費の増大や介護需要の増加を通じて社会全体にも大きな影響を及ぼす。同疾患は一度発症すると治癒が難しい。予防が最重要でありその対象となる「糖尿病予備群」の発見には血液検査が必要であっても、健診受診率の問題や費用面の制約から、年1回の同検査実施さえ危ぶまれる。現状では十分なスクリーニングが行われていない。

糖尿病は心不全の独立した危険因子だが、疫学調査によって、糖尿病予備群の段階でも心不全発症リスクがすでに上昇していることが示されている(参考文献)。つまり当該段階から心臓に何らかの影響が生じていると考えられるが、従来、病院などで一般的に行われている心電図検査や心エコー検査ではその変化を検出することができなかったという。

東京科学大学分子内分泌代謝学分野AIシステム医科学分野の研究チームは、東北大学大学院 糖尿病代謝・内分泌内科学分野との共同研究により、一般的な心電図検査のみで糖尿病予備群を発見できる新たなAIモデル「DiaCardia」の構築に成功した。さらに、腕時計型ウェアラブル端末で計測される心電図に相当するI誘導心電図を用いても同様の精度が得られ、糖尿病予備群を検出できたという。

日常生活でのスクリーニングへの応用可能性を示した。今回得られた技術を発展させることで、いつでも・どこでも・誰でも糖尿病予備群を手軽に見つけられるようになり、糖尿病の早期発見・発症予防に大きく貢献することが期待される。JSTムーンショット型研究開発事業(JPMJMS2023)による支援を受けて行われた研究の成果は、国際学術誌「Cardiovascular Diabetology」に掲載された。