社会資本の老朽化が進む。日本では昨今道路の陥没事故が社会問題となっている。それらを管理する自治体は、予算や人員が限られ膨大なインフラ設備に対する十分な保守が困難な状況下であっても、下水道等の陥没原因となる地下構造物内での目視検査や地上からのレーダ探査を鋭意行っている。
従来の点検方法はしかし、コストが掛かるわりに調査範囲が局所的であり、広域の面的カバーは非現実的だ。地下構造物に起因する陥没は地中での空洞進展によるものであり、地表の状態を観測する衛星の活用には限界があった。また、これまで、土砂災害の予測に向けて衛星による土壌水分量の推定方法を研究――。そこで電波は土壌へ浸透していて、電波の浸透量から土壌水分量を高精度に推定可能であることを明らかにしたという(論文)。
NTTは、合成開口レーダ衛星(SAR衛星)から道路陥没の予兆を捉える手法の実証に世界で初めて成功した。これにより、現地作業なしに、効率的・経済的に道路陥没のリスクが高い位置を絞り込める。当該技術は道路陥没の予兆を複数偏波の"電波の散乱"から把握することで実現している。道路空洞の点検データとの突合による検証を通じて、同技術の信頼性を確認しているという。
SAR衛星は定期的に周回しているため、これまでの地下構造物内や地上での点検作業よりも高頻度な状態把握が容易となる。同技術により道路の状態を継続モニタリングすることで、道路陥没の進展を監視して重大な空洞の見逃しリスクを低減できる。
今後は、上記成果を踏まえ自治体との連携による実証実験を通して、さらなる信頼性の向上を図り、社会の安心安全に寄与する。同社は引き続き、「NTT C89」ブランドのもとで衛星を活用した社会インフラ関連の課題解決を進めていく。今般の研究成果の一部を19日~26日、NTT R&D FORUM 2025 IOWN∴Quantum Leapにて披露する予定だ。