情報通信
待機時電力を不揮発性メモリ並みに削減可能なSRAMを実現
マイクロプロセッサやAIアクセラレータなどのCMOS(相補型金属酸化膜半導体)ロジックシステムに用いられる記憶回路SRAM――そのリーク電力は、AIアクセラレータのエネルギー効率も決める重要なファクターであることが分かっている。
PIM(プロセシング・イン・メモリ)型アクセラレータでは、積和演算の並列化とともにEMP(エネルギー最小点)が減少して、エネルギー効率の最大値も増大する。PIMでは0.3V以下のEMPにも対応する必要がある。通常、SRAMは6つのトランジスタからなる記憶セル(6Tセル)にて構成されるが、このようなリーク電力の削減要求に対応することは容易ではないという。
東京科学大学 工学院-電気電子系の院生と総合研究院 未来産業技術研究所の准教授らは、わずか0.2V程度の超低電圧でSRAMのノイズ耐性を大幅に向上できる新たなインバータを提案し、これを用いてULVR(超低電圧リテンション)可能な新しいSRAMのメモリセルを開発した。
実質的なPG(パワーゲーティング:適宜区画ごとに電源遮断)によってデータを失うことなく、待機時電力を不揮発性メモリ並みに削減できる。本技術は、IoTデバイスやモバイルエッジ・デバイス向けCMOSロジックシステムへの応用が期待される。そこで重要となるシステムの低電圧動作では、全電力に対する待機時電力の割合が大きくなるため、実質的なPGにて待機時電力を削減できる本技術は有効になる――。
微弱な環境発電下や長期バッテリー利用を前提とする新たな応用へとCMOSロジックシステムの利用を拡大できる。上記ULVRモードは、セルに工夫を加えることで、低電圧のEMP下でのSRAM動作も可能にする。PIM型AIアクセラレータの高性能化にも展開できるという。研究成果は「IEEE Open Journal of Circuits and Systems」に掲載された。