医療DX、分散型臨床試験の具現化に向けて治験業務の効率化を実証
治験は新たな治療法の開発や薬剤承認の前提となる重要なプロセスであり、患者にとっても貴重な治療機会となっている。一方で、従来の治験は特定の医療機関への継続的な通院を前提としていて、遠方に居住する患者や、通院が困難な患者にとっては参加のハードルが高い。
そうした課題を受けて、近年では「分散型臨床試験(DCT)」という新しい臨床試験の形が注目されている。DCTは、従来の治験と異なり上記前提がなく、遠隔診療や地域医療機関などのパートナー医療機関との連携を通じて、自宅や近隣の医療機関から治験に参加できる新しい治験実施形態だという。
京大病院、四国がんセンター、PRiME-RとNTTデータは今月22日、治験実施医療機関とは別のパートナー医療機関で臨床試験を行えるDCTの実現を見据えた治験業務の効率化に関する共同検証を開始した。来年3月まで、治験実施医療機関を京大病院、パートナー医療機関を四国がんセンターと見立て、NTTデータの治療支援システム「PhambieLINQ®」を活用して両機関の診察情報やスケジュール等のデータ連携、業務標準化を検証する。
治験参加者の早期特定に向けて、京大病院等が立ち上げた産学連携全国規模のリアルワールドデータ(RWD)収集基盤「J-CONNECT」にてPRiME-Rの「CyberOncology®」を活用した治験対象患者の抽出なども行い、DCTの実現可能性を高める治験ネットワークの基盤整備をめざす。
4者は同検証での成果を基に治験支援システムのさらなる高度化と、医療機関同士の連携強化を推進――治験業務の効率化と品質向上を達成し、患者にとって円滑かつ前向きに治験へ参加できる仕組みの構築を目標とする。将来的には日本国内における創薬の迅速化やドラッグラグの解消に寄与する――上記実証の成果を全国の医療機関へ展開し、日本の創薬開発の加速と医療DXの推進に貢献していく構えだ。