
ゲノム科学が進展した。近ごろ遺伝子と体質・行動の相関が多く報告されているが、その因果関係を深掘りすることは、相関とは異なり、多因子間の影響の考慮を要するため困難だった。食嗜好、ライフスタイル習慣、体格といった複雑な要素が絡み合う領域では特に、精密なデータ分析が不可欠だという。
ジーンクエストと富士通は、AIサービス「Fujitsu Kozuchi」のコア技術である因果AIを活用し、遺伝子とライフスタイルの関係性に新たな知見を得ることに成功した。①高速因果探索手法、②信頼性強化機能、③施策提案機能で構成される、同AIを用いた分析の結果、甘味への嗜好性には遺伝的なアルコールの強さも一部関連するものの、その関連は主に飲酒頻度を介したものである可能性が示された。
コーヒー摂取頻度に関しては飲酒頻度との関連は見られず、遺伝的なアルコールの強さが影響している可能性が示唆された。これは特定の遺伝的特性が個人の飲料選択に影響を及ぼす可能性を示している。また、ポリジェニックスコアを用いた解析の結果、遺伝的な太りやすさと体格指数(BMI)との間に直接的な関連性が示唆され、その統計的な影響度は性別や年齢と同程度である可能性が示された。
食嗜好との間にもわずかな関連性が見られた。②を活用し、京都大学と弘前大学が開発した「弘前健診因果ネットワーク」を転用した分析では、BMI変化の主要因とされてきた食事量の影響が相対的に低下し、脂っこい味やうま味への嗜好性がより影響力の高い要因として示唆。親族の病歴(がん、高血圧症、心臓病等)や調査対象者の身長、雇用形態など、従来分析対象外だった因子が、変数間の隠れた共通原因となっている可能性なども示唆された。
今後、上述の因果関係をもとに、③により、個人の食嗜好・ライフスタイル習慣・体格、遺伝的特性に応じたより個別最適化された健康施策提案が可能になると期待されるという。