"本質的に解決が困難な課題"を効果的に解決する手法を提案

生成AIが急速に普及した。近ごろ大規模言語モデル(LLM)を借りて創意したり仮説を立てたりする研究が多く行われているが、一見無関係な分野の知識や技術を援用して効果的な問題解決策やアイデアを生みだす方法論の開発は発展途上だ。

産学を問わず大きなブレイクスルーとなる解決策は往々にして異分野融合的・学際的である。一方LLMは、単純な尋ね方に相応の回答しかしない。
その性質上、投げかけた質問中の単語に影響を受けた回答が生成されやすい。そこで、RAG(検索拡張生成)や知識グラフを活用して課題と異なる分野の知識を活用する手法が提案されている。

そんな方法はしかし、知識の検索・選定方法によっては肝要な知識が選ばれず、有効策を生成できない可能性がある。必須知識・分野の見落としといった観点で、まだ十分に対応されていないものだという。YCUの生命情報科学研究室東京科学大学の元素戦略MDX研究センターAGCの材料融合研究所からなる共同研究グループは、「本質的に解決が困難な課題」に対し、知識・技術網羅リストを用いて解決策を生成する手法"SELLM"を提案した。

材料科学分野にて検証の結果、課題から離れた材料や分野のアイデアを活用した解決策や代替案が生成された。SELLMは汎用的なフレームワークであり、知識・技術の横串を要する多様な問題に、異分野融合的な有望解決策やひらめきを提供し得るポテンシャルを持っている。

研究室や企業特有の技術・知識まとめリストの選択で、解決策の生成を制御できる。アイデアを得る分野の幅を自由に調整できる。SELLMで生成される異分野融合的な解決策は、多様な研究者や開発者のインスピレーションを刺激する、学術界~産業界の多彩な領域における困難な課題に対し、効果的な解決策を生成することが望めるという。研究グループの成果は「Communications Materials」に掲載された。