
植物の健康や成長の正確な把握は、人類と地球環境の持続可能性に肝要だ。光合成により産出されるショ糖(スクロース)すなわちブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)が結合した二糖類は、エネルギーを運搬する、植物全体の生理的な状態を知るうえで重要な指標となる。
人や動物の健診等で酵素センサが使われているのに、ショ糖検出用センサ技術は十分に発展していない。今日、その構造が複雑で、茎や葉の硬さ、水分量、厚みなどが種によって大きく異なる植物の内部で、ショ糖を常時監視するには、まずセンサ埋込時に植物を傷つけないこと、そして長時間安定的に機能する形状や仕組みが求められる。
植物内部のショ糖濃度は非常に低いため、高感度・定量検出が可能である必要もある。光合成、生育、環境応答の解明に必須のリアルタイム計測用センサは、環境変化や機械的ストレスにも耐えねばならず、従来これら課題を酵素センサで解決することは困難だったという。
早稲田大学大学院情報生産システム研究科、北九州市立大学環境生命工学科ならびに岡山大学異分野基礎科学研究所の教授らは、茎や果実内に刺入し、糖の動きを測る酵素センサを開発。酵素反応により電流信号を得る自己発電型で、ストロベリーグアバの茎と果実内でのショ糖動態を24時間リアルタイム測定できる今回の針状バイオセンサについて、安定同位体標識水を用いた検証で、日本杉の葉からの光依存的な水とショ糖の吸収を確認した。
多酵素電極を搭載した同センサは、糖分の長距離輸送(葉→茎→根)や環境応答の評価、植物成長予測モデルの精度向上に貢献するだろう。センサを小型化・柔軟化すれば多様な植物種や器官に適用でき、スマート農業や植物生理学研究への応用も期待される。科研費、JSTさきがけ「電子・イオン制御型バイオイオントロニクス」(JPMJPR20B8)による、今般の研究成果はELSEVIER系科学誌に掲載された。