
ダム建設におけるコンクリート運搬。ワイヤロープ軌道を高速でいくトロリー下にあるクレーンと、コンクリート放出時のバケットが縦・横方向に揺動する。そのため、コンクリート放出地点の担当がクレーン操作室のオペレータに無線で合図を送り、オペレータは揺動を抑えられるようそれと連携しつつクレーンを操縦する。
オペレータと合図者双方の熟練技術により品質と安全を保ってきた現場で今、技術者の高齢化による担い手不足が課題となっている。建設業界において、建設機械の遠隔運転や複数台同時コントロールには、大容量通信が必要で、ローカル5Gの特性は建設DXの推進に効果的だと考えているという。大林組は、国交省中部地方整備局発注の新丸山ダム建設工事にて、「自律型コンクリート打設システム」の確立をめざし開発を進めている。
その第1段階として、KDDIエンジニアリングと連携し、コンクリート運搬に使用するケーブルクレーンの自律運転システムを構築。今年2月にローカル5G環境下で、上記クレーン操縦の自動自律運転を実現した。同システム(動画)は、ケーブルクレーンのフックやトロリーに設けた無線端末で揺動を瞬時に検知し、自動で抑制する。オペレータの熟練度によらない安定した工事の進捗や品質の確保が可能になる。
クレーンのフックに搭載したカメラで撮影した4K映像が監視室にリアルタイム伝送され、高精細画像が自動自律運転における安全機能や監視等安全性の向上にも寄与している。今後は高解像度の映像をタイムラグなく確認できることを活用し、AIを使った運転制御やコンクリート量の計算など新丸山ダム建設工事での各種工事プロセスへの活用にも取り組む。
両社は、同建設工事での「自律型コンクリート打設システム」の一層の進展を図るとともに、多様な事業者と協力し、建設業におけるローカル5Gによる更なるDX技術の発展に向けた研究開発や実証・導入を進めていく構えだ。