市街地をゆくEV向け動的ワイヤレス給電の最適配置が明らかに

カーボンニュートラル実現に向けた電気自動車(EV)の導入が先進各国で加速している。バッテリーのみで動くEVはしかし今、航続距離の短さと充電スタンドの少なさなどが普及の障壁となっている。そこで、走行中ワイヤレス給電(DWPT)システム技術が同障壁の打開策として日夜研究されている。

同技術は、道路に埋め込まれたコイルからEVに直接電力を供給することで、走行しながらの充電を可能にし、航続距離の不安と充電スタンドでの長い待ち時間を解消する。ただしこれまで、DWPTを都市のどこにどれほど敷設すれば良いのか、そのモビリティ社会像が明確に示されていなかった。DWPTインフラの整備には大規模な投資が必要になることから、特に市街地移動について定量的分析に基づく最適配置戦略の提示が急務になっていたという。

東京大学生産技術研究所芝浦工業大学工学部の研究チームは今月、アリゾナ州立大学とともに交通系国際会議TRB 2025 Annual Meetingにおいて、DWPTを用いた「無限走行」の実現に向けたモビリティ社会像を提示した。埼玉県川越市を対象とした数理最適化と詳細交通シミュレーションの結果、全道路長約150kmのうちわずか2359m(1.6%未満)のDWPT敷設で、市内の全EVが無限に走行し続けられることを明らかにした。

交差点付近への設置が効果的でありつつも、交通量と一時停止時間、待ち行列長と敷設コストなど様々なトレードオフを考慮しながら、丁寧に最適配置する戦略が重要であることも示した。EVインフラとしてのDWPTの前向きなポテンシャルを浮き彫りにした同研究は、低炭素モビリティの実現に向けた重要なステップと位置付けられる。

DWPTの導入は将来の自動運転社会との親和性も期待されるという。研究チームは、低炭素社会実現への重要な鍵となるDWPTのさらなる発展と普及に向けた取り組みを続けていく構えだ。