用途探索の効率化やものづくり無形資産の活用を生成AIで一層加速

製造現場では安全な設備運用のための「危険予知」活動を行っている。熟練社員の高年齢化などにより、そのノウハウの継承が課題となっている。またこれまで、既存ないし新開発材料における新規用途探索では、専門性を持つ従業員の調査・分析で候補を考案して、有望なものを絞り込んでいたという。

旭化成は9日、材料の新規用途探索や製造現場の技術伝承において生成AIの活用を開始した。蓄積された無形資産の活用を生成AIでさらに加速し、競争力強化や事業上のリスク低減を目指していく。同社は昨年よりグループ全体での積極的な生成AI活用を支援し、業務効率化を進めてきており――

個人の経験を基にリスクを予知してきた製造現場では、過去事例のデータを読込んだ生成AIにより、経験の浅い従業員でも抜け漏れなくリスクと対応策を洗い出し、安全性・効率性向上とともに、技術伝承を加速できるようになった。作業前の危険予知に加え、これからは画像・音声など工場の各センサーから取得した非構造化データを解析し、作業中の危険回避にも役立てていく予定だ。

新規用途探索では、使い道を自動抽出するAIと、その中から特に有望な用途候補を抽出する生成AIを開発した。膨大な文献データから6千超の候補を考案し、ある材料では候補選別時間を6割短縮できた。生成AIにより、専門家のアイデアと遜色のない考案や、より革新的な発想が可能になる。材料化学や医療分野での活用を進めていき、いずれ他社製品の技術分析をして、協業先選定に活用することも視野に入れている。

各従業員の生成AIツールを使いこなすスキルが重要であり、各組織の業務ではソフトウェアやITなどの知識も必要となるため、個人・組織両面でのサポートをしている。「DX VIsion 2030」を掲げる同社は、これまで培った知見を活かしながらグループ全体でさらなる生成AIの活用を進め、新たな価値創造を加速していく構えだ。