人生100年時代。超高齢社会の日本では、健康寿命の延伸と生活の質の維持に向けて、「予防医療」へのシフトが求められている。年齢を重ねると複数疾患の発症リスクが高くなるため、予防医療においては、より包括的な健康管理が必要だという。
NECソリューションイノベータと倉敷中央病院は、総合的に健康状態を把握することに重点をおき、一度の健診結果から複数の疾患リスクを同時に予測するAI――同病院の保有カルテと予防医療プラザが保有する健康診断の情報を用いて、2型糖尿病、脂質異常症、高血圧症、心房細動、急性心筋梗塞、心不全、動脈硬化、脳梗塞、アルコール性肝疾患、肝線維症/肝硬変、慢性腎臓病が4年以内に発症するリスクを予測するAIを開発した。
2012年~22年に健診を受けた92,174名を解析対象とし、受診者の50%を学習、25%を一次評価、25%を最終評価のデータとしてランダムに抽出し利用した。疾患診断までの追跡期間の情報にCox比例ハザードモデルを適応して予測AIを作成。4年以内の発症リスクに対する曲線下面積 (AUC)を用いて予測モデルを評価した。結果、上記11種類の生活習慣病について、AUCが0.7以上の精度であることを確認した。
複数の疾患リスクで関連性を調査し、動脈硬化と脳梗塞、急性心筋梗塞と心不全の間で関連性の高いことが確認できた。一方で、肝疾患は、他の臓器での疾患および発症リスクとの関連性が低く、特定の疾患のみに注目した場合、肝疾患自体のリスクを見落とす可能性があると判明した。
疾患発症リスク予測機能として「NEC 健診結果予測シミュレーション」に搭載されている、本予測AIの活用により、疾患の発症前に健康状態を理解し、個人の健康状態に応じた検査の推奨や、生活習慣の改善策を提案するオーダーメイドヘルスケアの提供をめざすという。両者の研究成果は、「AJPM Focus」に掲載された。