上水道の減圧弁の異常検知、AI分析で事前対策が可能に

六甲山系の起伏に富んだ地形であるため、配水池を備えて自然流下方式による給水を採用している。局所的に適正水圧を維持できない地域では、公道内の配水管に減圧弁を設けて水圧を調整してきた。それら配水減圧弁には水圧計を設置し、定期的に水圧データを現地で回収してきたが――

故障対応は事後にしかできず、その修理は複数箇所にわたることも多く、原因特定に時間がかかること、職員の負担が大きいことも課題だったという。神戸市水道局とともに、日立システムズは、上水道の水圧データをAI分析して減圧弁故障の予兆を検知する研究を行った。この成果を活用する水道事業者やメーカーは、配水減圧弁の故障前診断・保守ができるようになる。

今年1月に減圧弁水圧監視システムでしきい値超過を検知した同局は迅速な現地対応を実施した――。当時の水圧データをAI分析した結果、故障確認の約1カ月前から毎日0~6時に、水圧値が上振れしていた。超過原因は減圧弁内部のネジの緩みなどだった。それらにより水圧が徐々に上昇し始めていたと考えられ、水圧の異常検知以前にAI分析を活用すると、故障の予兆検知ができると分かった。

これにより、高精度のメンテナンス計画が立案でき、水道事故発生件数が低減され、より持続可能な安定した上水道を提供できるようになる。地域住民にとっても水道事故による急な断水などの影響が少なくなる、効果が期待されるという。同局は上記研究結果を令和6年度日本水道協会全国会議で発表した。

予兆検知によって、故障の未然防止や保守作業の効率化等が見込める。同市内60カ所以上の減圧弁付近での水圧データの提供・運用を行っている同社は、今回の研究における検証をさらに進め、2025年度からのサービス提供をめざす。そして、水道事故防止・最小化による住民被害の減少、水供給の安定化をめざす、神戸市水道局をはじめとする全国の水道事業体の取り組みを支援するという。