介護を受ける人の感情を約8割正しく捉えるしくみで業務負担減へ

要介護(要支援)認定者数が増加傾向にある。日本の介護業界は人手不足が慢性化している。現場では、要介護者の感情を理解できないために適切なサポートやコミュニケーションができず、相手に不快感やストレスを与えてしまったり、自身の負担が重くなったりするケースがある。

そのため、要介護者の感情や状況に応じた適切なケアの提供による、入居者の安心安全の確保と介護サービスの品質維持・向上、介護の負担軽減・効率化が急務だという。NTTBP日立は、介護施設入居者の感情変化における予兆の検知によるサービス向上・業務効率化を目的に、AI(感情分析サービスのエンジン)を活用した実証実験を、テルウェル東日本が受託運営する介護施設で行った。

「感情の観察」では、介護施設特有の環境を考慮し、①スタッフと入居者が1対1でコミュニケーションを行い、衣服の手入れや薬の管理など入居者の個別のニーズに合わせたサポートが必要となる居室の様子、②入居者同士が集まり、会話や交流を行う食堂での食事の様子や健康運動を行う様子を、6日間撮影した。

「感情の分析」では撮像と音声から入居者の感情をAIで分析し、各シーンで7種(怒り、悲嘆、恐れ、平静、嫌悪、幸福、驚き)の感情のうち最も割合の大きかったものに分類した。「要因の分析」では入居者のプロファイリング情報、スタッフによる介護記録、入居者の感情に関するアンケート結果を撮影データの分析結果と組み合わせることで、どのようなシーンでどのような感情になるかを把握し、不快感やネガティブな感情変化を示す要因を分析した。

感情分析の結果は対象者の感情と約75%の精度で一致し、入居者の感情変化の予兆把握にAI活用の有用性が確認できた。介護現場における課題解決を通じて、人々の生活の質の向上やウェルビーイングな社会の創造に貢献していくという。両社は今年度中の上記仕組みのサービス事業化を推進していく構えだ。