マイマイガによる森林食害の広域発生を特定・予測可能に

生物多様性の保全や土砂災害の防止、社会の脱炭素化にも貢献している。森林は、その健全性が、人間の営みや火災や異常気象だけでなく、昆虫にも脅かされている。ヨーロッパ・シベリア・アジアに生息している毒蛾のマイマイガは、周期的に大発生して多様な樹木の葉を食害する。当該被害は深刻だ。

その発生予測管理は森林の持続可能な利用において重要な課題だ。近年、衛星が観測した森林の正規化植生指数(NDVI)を用いて、害虫被害の監視が試みられるようになった。が、食害によるNDVI変化は樹木のフェノロジー(生物季節)よりも一時的かつ微細であるため、NASAのLandsat(解像度30m、16日周期観測)やMODIS(解像度250~500m)などの衛星画像では検出が困難だった。

マイマイガは約10年周期で局所的に発生する特徴的な動態を持ち、目視レベルでの個体数観測データを用いた統計モデリングなどの予測手法の適応も不可能だったという。

東京農工大学農学研究院ロシア科学アカデミーシベリア支部の研究チームは、東北大学高知大学、露Federal Agency of Forestryとの共同研究により、ロシア山岳地帯で生じたマイマイガによる食害分布を、2機が各5日周期・解像度10mで撮影するESAのSentinel-2A/Bの画像を用いて推定し、得られたデータの時系列解析から植生の異常の経時的変化を予測し、従来困難だった広域発生の特定・予測可能性を示した。

「衛星画像を用いたマイマイガの食害による被害分布の推定」「非線形時系列モデルによる植生異常の検出」を達成した。今後、森林が提供する多様な生態系サービス(生態系の生物多様性がもたらす恵み)を持続的に利用するための適切な防除・管理方策への提案につながることが期待されるという。研究チームの成果はForest Ecology and Managementに掲載された。