所定エリア内の電車やバスなどが定額で乗り放題になる。観光誘致などの目的で販売される周遊パスは、施設や各種店舗でもお得に使える便利な仕組みだ。けれどそれを提供する自治体や事業者においては、売上の適正配分や即時精算の難しさ、多様な商品設定による事務処理の煩雑さ――
といった課題がある一方、利用者も、通常購入するより得になる按配が直感的にわからないといった声を上げる。今年3月21日、デジタル通貨フォーラム地域通貨分科会メンバーのパナソニック ホールディングス、SocioFuture、auフィナンシャルホールディングス、TISおよびディーカレットDCPは、デジタル通貨DCJPYを用いたトークン型観光周遊パスの技術検証を実施した。シナリオ策定に際して、JR西日本も知見を提供した。
観光周遊パスをトークンで実装し、複雑な事務処理(交通機関・店舗への利用状況に応じた精算、利用者への未使用分ポイント返還や紹介報酬の付与等)をDCJPYのスマートコントラクト――プログラム内容やデータ処理結果は改ざんが困難であり、取引の真正性も担保されている――で自動化する検証を行った。
結果、周遊パス提供自治体・事業者は、利用者による交通機関や店舗ごとの利用状況に応じてパス購入代金が各事業者に自動配分され、即時に受け取れる(複雑な事務処理の軽減可)、そして利用者においては、使い切れなかった差額が自動的にポイントバックされ、そのポイントで土産などを購入できることが確認された。
DCJPYネットワーク上のスマートコントラクト利用で、周遊パスに関わる基本的なユースケースについて自動化・省力化の技術的な実現性が認められた。周遊パスの社会実装時の課題は今回の検証スコープ外の部分も含め一定程度抽出できているという。同分科会では課題の深掘りについて協議し、デジタルIDとの紐付けや周遊パスの魅力アップ策等の検討を進めていく構えだ。