住民データの通信・保管で量子暗号と秘密分散技術の有用性が明白に

組織間でのデータ共有が求められかつ、重要情報が超長期保存される時代となった。いま、データを守る災害対策とサイバー防衛策が必須であり、予め窃取しておいた解読不能データを量子コンピュータ普及時に解読し悪用する、近未来の攻撃にも備えなければならない。そこで――

情報理論的安全性を備えた新しいセキュリティシステム"量子暗号通信の広域テストベッド"が整備・運用開始された。他方、総務省「自治体DX推進計画」で行政手続きのオンライン化が示され、近ごろ複雑化する各種業務を外部委託する自治体が増えている。自治体向けBPO事業では、住民の個人情報(氏名・住所等)は高セキュリティ環境下での管理が不可欠であり、将来的なリスクへの対応は喫緊の課題になっているという。

TOPPANデジタルNICTは昨年11月~今年3月、前者事業所内に量子鍵配送(QKD)装置を設置し、高秘匿情報(住民情報)の送受信・保管実証を行い、量子暗号と秘密分散システムの有用性を確認した。同実証では、後者提供の量子暗号ネットワークテストベッドを、TOPPANグループの自治体向けBPO"給付金申請の受付業務"の作業環境と想定して、データ送受信やバックアップ保管の効率性/実用性/満足性を検証した。

テストベッドの利用拡大のため、両者は、同実証(ISO/IEC25010・品質モデル参照)で得られた結果と知見を基に利便性アップに向けた改良、他の高秘匿情報(認証要素/行動履歴/バイオデータ等)を扱うユースケースの適用実証を目指す。安全性やユーザビリティ向上のため本人認証やアクセス管理などへの「PQC CARD ®;」の適用も検討していく。

量子時代にも安全安心なデータ送受信・保管を可能とする。行政DX実現に貢献していく。上記テストベッドは疑似量子コンピュータも有するので、物流や製造分野のDX、組合せ最適化問題の解決といった付加価値が見込めるという。