VDESによる海洋デジタル通信、データ交換サービスの実用性を実証

次世代AIS(船舶自動識別装置)とも呼ばれる。それは、最大通信速度307kbpsの新たな海上通信装置だ。既存AISよりも最大32倍速く、船舶同士や船舶・陸上局間での双方向データ通信を可能にする。衛星を利用すれば通信エリアが大幅に拡大する。

従来の一方向の通信がこれにより双方向通信になることで、高効率で信頼性の高いデータ交換を実現できる、船舶のデジタル化促進が期待されるという。古野電気は、大島商船高専と共同して昨年6月から、VDES(VHFデータ交換システム)による海洋デジタル通信の実用化に向けた実証実験を実施。このたび電波伝搬の検証を終え、他船航路情報交換を始めとするVDESサービスの実用性検証による実験データ取得に成功した。

練習船大島丸を活用して周防大島近海で行った上記実験では、VDES通信により航海関連情報を交換し、ブリッジに設置した同社開発中の3D Bird Viewシステム(VRナビゲーションシステム)を使用して表示・検証した。VHF無線機や既存の航法装置との連携システムを構築し、都合3回の船陸間および船船間でのVDES通信実験を行い、効果確認を実施した。

①船陸間2拠点での電波伝搬の実証実験(陸上:学校建屋~実習船すばる)、②船船間2拠点での電波伝搬の実証実験(大島丸~すばる) データ交換サービスの実用性の検証、③船陸間3拠点での電波伝搬実証実験(陸上:学校建屋~大島丸~すばる) データ交換サービスの実用性の検証。結果、③でのVDESによる「電波伝搬品質の検証」および「データ交換サービスの実用性の検証」について実用性があることを確認したという。

同社は、VDESを早期に実用化することで、船橋のデジタル化と航海の安全と効率化の実現を目指す。今後も事故防止・船員不足の解消など日本の海事産業が抱える課題への理解を深め、それらの解決に向けた取り組みを実施していく構えだ。