量子鍵配送×《光ファイバ+光無線》で都市部のセキュア通信網確立へ

国家ならびに経済安保、金融・医療系での個人情報保護など、広範な分野でサイバーセキュリティが重要課題となっている。量子コンピュータの実用化が迫った今、従来の暗号技術の危殆化が懸念されていて、理論上盗聴が不可能な量子暗号通信、QKD(量子鍵配送)への期待が高まっている。

そこで、6G時代の量子セキュアネットワークの実現に向けて共創――昨年9月にはQKDを用いた拠点間VPN(仮想私設ネットワーク)通信の実証実験を行った。従来のQKDでは、都市部の拠点間接続に光ファイバを用いる必要があり、ビル間や公道を挟んだ建屋間など、光ファイバの敷設が困難あるいは多大な時間を要する拠点では、QKDの導入が阻害されてしまう場合があったという。

ソフトバンク東芝デジタルソリューションズは今回、後者のQKDシステムを前者の光無線通信テスト環境に導入し、光ファイバと光無線を組み合わせたQKDの動作実証に成功した。光無線にも量子鍵配送を組み合わせることで、低コストかつ短期間でのQKD導入が可能になり、都市部のQKDセキュアネットワークの拡大につながるという(量子暗号通信解説@東芝)。

光子伝送路の途中に光無線を組み合わせた場合でも、光ファイバ向けQKDシステムを変更することなく安定した鍵生成が可能であることを確認できた。性能評価にて、暗号鍵の生成が可能な伝送路全体の光の減衰量を把握することもできた。特性把握を一層深めることで、光無線を組み合わせたQKDシステム運用むけ無線機の要件定義、無線区間の回線設計が可能になり、セキュアネットワークの設計に大きく寄与する。

いずれビルの屋上などに光無線機を設置して活用することで、光ファイバの新設なくして短期間でQKDが利用可能になるという。両社は今後、光無線伝送路の長距離化によるエリア拡大など、QKDセキュアネットワークの拡張性を高める技術の研究開発を進めていく考えだ。