工事現場の汚濁水自動管理システム、処理剤の添加量をAIで最適化

土木工事で発生した湧水は、土粒子やコンクリートが混入することにより濁度やpHが高くなる。そのため、現場内の濁水処理設備において、中和ないし凝集され、放流基準を満たしたのち河川等へ放流される。当該処理作業の際には、担当者が汚濁水の処理状況を目視点検し――

複数の処理剤を最適量に調整・添加している。トンネル現場では特に、地質の変化や切羽で実施中の工種によって水質が異なるため、同調整を頻繁に行う必要がある。現場では湧水が常に生じる。夜間や休日でも管理が要求され、担当者の拘束時間の短縮が課題になっているという。西松建設は、濁水処理設備内で計測したpHや濁度、土粒子の凝集状況の映像を基に、処理剤の添加量をAIで自動管理するシステム「FlocTrack」を開発した。

ジオマシンエンジニアリングsMedioMODEとのコンソーシアムで開発し、PRISM予算を活用した国交省PJ令和4年度「建設現場の生産性を向上する革新的技術」として選定された。同システムは、汚濁水の質に合わせて各種処理剤の添加量を最適に調整し添加する。突発的な汚濁水発生にも対応可能とする。

処理剤の調整・添加を自動化することで、管理時間が約36%短縮され、省力化が期待できる。事実、1週間当たり730分であった管理時間が、同システムの活用により470分になった。計測データと映像データはクラウドに上げられ、遠隔地からでもWebで設備の稼働状況を監視できる。クラウドに蓄積されたデータをAIの再学習に活用して判定精度を高め、処理剤の過剰添加を防止できる。

同システムについて、山岳トンネル現場に限らず複数現場での運用を積み重ねることでAIの判定精度を向上させ、地質条件の異なる様々な現場に対応可能かつ一層汎用的なシステムの構築をめざすという。同社は、各種処理剤の残量管理にも取り組む。濁水処理設備の運転・管理作業の自動化を目標にしている。