AIにて子宮肉腫を鑑別する術前診断の自動化システムを新開発

子宮肉腫は予後の悪い希少がんだ。その治療は子宮全摘手術を要するが、成人女性で最も罹患するとされる子宮筋腫は良性腫瘍であり、妊娠の希望がある場合には子宮を温存して子宮腫瘍のみを摘出したり、薬物治療などで保存的に経過観察したりするなど治療方法が多岐にわたる。

ゆえに術前診断は患者の将来を考慮した治療方法を検討する上でとても重要になる。子宮筋腫と子宮肉腫の鑑別はMRI(磁気共鳴画像)診断が有用だが、変性(腫瘍内部の構造変化)を伴う子宮筋腫では、子宮肉腫に類似した特徴を呈する場合があり、肉腫であっても筋腫と診断されてしまう「オカルト腫瘍」が臨床上の問題点になっているという。

東京大学大学院医学系研究科生殖・発達・加齢医学専攻)、東大病院放射線科サイオステクノロジーの研究グループは、診断精度を向上させるため医師が行っているAI学習のための画像選別作業を自動化するシステム、「子宮肉腫自動診断AI」を新開発した。同システムは未知の症例データに対しても学習データと同等の診断精度を発揮した。

子宮肉腫と子宮筋腫(計263例)の術前MRI画像を用いて、深層学習および評価を行った。結果、交差検証(データを学習用と評価用に振り分け分け目を変えつつ学習・評価を繰り返して、予測モデルの性能を一層正確に評価する手法)に使用したデータセットに対する子宮肉腫自動診断AIの成績は正診率89.32%となり、交差検証に使用していない未知のデータセット(計32例)を評価したところ正診率92.44%が得られた。

これにより、臨床現場で得られた画像の医師による選別が不要となる――。全ての画像をそのままAI診断システムで評価できる、社会実装への道が拓けた。上記新開発システムは、オカルト腫瘍の誤診断予防を含め、実際の臨床現場における診断補助としての役割などが期待されるという。3者の研究成果は国際学術誌JGOに掲載された。