電子カルテの非構造化データから薬物治療効果をAIで判定する

電子カルテデータは、薬剤の治療効果や安全性などの臨床アウトカム取得の可能性がある。活用が期待されている。一方で、臨床アウトカムに関わる多くのデータは経過記録や画像検査レポート等に含まれていて、それらのテキストデータを構造化しなければ解析は困難だったという。

宮崎大学NTTデータファイザーは、複数医療機関の電子カルテデータに適用可能な「肺がん患者の薬物治療効果を判定するAIモデル」を構築した。同モデルは、電子カルテの非構造化データを自然言語処理し、薬物治療効果を抽出するものであり、今回の研究では同大学の電子カルテデータをベースに、大規模言語モデルBERTを用いてモデルを構築したうえで、6つの医療機関の電子カルテデータへの適用可能性と実用性を検証した。

その結果、複数医療機関の電子カルテデータに適用可能であることに加え、同モデルで抽出した薬物治療効果から算出した臨床研究の評価項目は人が抽出した結果と同様の傾向を示すことを確認した。複数機関の電子カルテデータに適用可能な薬物治療効果判定AIモデルを構築できることを確かに認めた。

治療効果の薬剤間の比較や肺がん以外の疾患の薬物治療効果判定等に、非構造化データ活用の広がる可能性が見込まれる。多施設の大規模電子カルテデータベースから医療に関する臨床アウトカムの情報を効率的に収集して活用できれば、個別化医療のさらなる進展、適切な医薬品への早期のアクセスなど様々なベネフィットが期待される。

リアルワールドデータ利活用の有用性を高める取り組みにより、医薬品をより適切な患者に届け、医薬品の価値を最大化し、医療に貢献することを目指していく。3者による今回の研究結果の一部は、呼吸器学会学術講演会等で発表されたほか、ジャーナルAdvances in TherapyHealth and Technology医療情報学(2023年10月)に掲載された。