スマート農業市場は右肩上がり、2029年には700億円超へ

従来の農業技術と情報通信技術を連携させることで、更なる生産の効率化や農作物の高付加価値化を目指す。スマート農業は、生産から販売まで情報通信技術を活用した、高い農業生産性やコスト削減、食の安全性や労働の安全等を実現するものである。

その対象分野は①栽培支援ソリューション、②販売支援ソリューション、③経営支援ソリューション、④精密農業、⑤農業用ドローンソリューション、⑥農業用ロボットだという。矢野経済研究所は、国内におけるスマート農業市場を調査し、市場規模、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。2023年度のスマート農業の国内市場規模(事業者売上高ベース)は前年度比106.7%の322億9,900万円の見込みである。

圃場の水管理を遠隔でするスマート水管理システム、施肥量低減につながる可変施肥に対応したスマート田植え機システム、栽培環境の変化を把握する生育マップを作成できるリモートセンシングシステムなどが普及拡大している。同マップと連動した可変施肥システムの普及により、作物の生育不良の箇所だけにピンポイントで肥料を散布でき、生育のバラつきを解消することに加えて、余分な肥料の施用や労力の削減にもつなげられる。

今後は温室効果ガス削減を数値化するスマート農業技術の普及に期待がかかる。そして、「農業データ連携基盤(WAGRI)」「農機オープンAPI」、スマートフードチェーンプラットフォーム「ukabis」の運用が始まり、トレーサビリティによる安全性確保や需給マッチング、フードロス削減などの効果が望める。さらには5G環境の整備や準天頂衛星システム11基体制化などより、スマート農業全般がますます普及拡大する見通しである。

29年度のスマート農業市場規模は約709億円まで拡大するだろうという。オリジナル情報が掲載されたショートレポートは1,000円で利用できる(同社購入サイト)。