市内で働く車両400台のドラレコ映像を消防・救急活動に使う

火事が起きると、多くの人が自力で消そうとして、119通報が遅れてしまう。気が動転している通報者からは、なかなか正しい情報が得られない。結果、消防隊は現場に着いてから、車両の追加出動や装備の見直しをすることもある――

と、プロジェクトリーダーが幼馴染みの消防士から聞いた"119の実態"。それがこの仕組みの創出契機だという。トヨタは、堺市と、現場状況が分かりにくい火災や交通事故等の緊急を要する事案に対して、現場付近を走行する車両のドラレコ映像を活用する共同実証実験を25日より行う。同社が開発した「選択した車両のドライブレコーダーの映像を閲覧できるシステム」を、9カ月間実地試験・検証してきた同市消防局の消防指令センターで稼働させる。

119番通報だけでは把握しきれない現場の状況をより正確につかむために、オペレーターが選択した付近の車両からの映像を閲覧する。協力企業と連携し、堺市消防管内を走るバスやタクシー、トラックなど約400台に搭載したドラレコからの映像を活かす。同システムは、現場状況等の映像を把握することで、渋滞回避ルートを選択して迅速な到着を実現したり、あらかじめレスキュー隊が出動し素早い人命救助をおこなったり、有効事例にも繋がっている。

映像に映り込んだ歩行者等のプライバシーへの配慮、個人情報の取り扱いについては、社外有識者の意見を得たほかウェブ調査やヒアリングを実施し、堺市民の意見も傾聴――皆さんの声を踏まえ、適切な対応を実施するとともに、十分な配慮に努めている。今後、システムの改良やプライバシーへの配慮などの議論を重ね、他自治体との検証も検討していくという。

同社は、今回の取り組みにてデータを一層タイムリーに活用した社会課題の解決、より良い暮らしの実現を目指している。モビリティ社会の究極の願いである「交通死傷事故ゼロ」と、「いい町・いい社会づくり」への貢献を進めていく考えだ。