経年的な胸部レントゲン写真のCTRから心不全発症リスクを明らかに

心不全は世界的に主要な死因だ。予防が重要であり、心臓に構造的・機能的な異常が認められても無症状のステージBから、有症状のステージCへの進行予測が可能か、様々な研究が行われてきた。従来、安全性が高く健診で活用される胸部レントゲン検査を用いた研究では――

レントゲン写真で測定されるCTR(心胸比:肺の幅対心臓の幅)と心臓の機能とは無関連扱いだったいう。東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の研究グループは、NECソリューションイノベータと共同で、同大学主催の第二次東北慢性心不全登録研究(PDF資料)に登録された心不全ステージB(器質的心疾患のあるリスクステージ)の患者5126名のデータを解析し、心胸比の経時的な変化を評価した。

その結果、登録時CTR>53%であり年間CTRが0.5%ずつ上昇する(心陰影が拡大していく)患者は、心不全を発症する危険が高いことを明らかにした。1回のレントゲン写真ではなく、経年的な胸部レントゲン写真のCTRを評価することで、心不全の発症予測が可能なことを初めて明白にした。

既報と同様にCTRと心臓超音波検査による左室拡張末期径(LVDD)の相関関係は低く、LVDDは2群(ステージB群とステージCに進行した群)間で臨床的に大きな違いは認めなかった(心不全発症群48mm、心不全未発症群50mm)。一方で上述の結果を得た。また、心不全を発症しなかった群は、登録時CTRの平均は50%であり年間0.1%程度しか増加しなかったことが分かった。

健康診断での胸部レントゲン写真で経時的にCTRを比較することや病院・クリニックで撮影された胸部レントゲン写真のCTRを経時的に調べることで、心不全発症高リスク群を同定して、早期に治療介入するなど、新たな診断・治療戦略に繋がることが期待されるという。研究成果は『IJC Heart and Vasculature』に掲載された。