深層学習のパーティショニングにより、多様性に適応する顔認証実現へ

一般的な顔認証技術はデータの少ない属性で認証精度が低下する。その学習データは"実世界の人口比?"の影響を受けやすく、人種間、性別間でデータ規模が異なる。そのような傾向は、同技術の社会実装が進む昨今、AIの公平性に対する社会的関心の高まりに伴い問題視されつつある。

顔認証の技術基盤であるディープラーニングは大量の学習データを必要とし、属性データの偏りにより認証精度に差が生じてしまうという。パナソニックコネクトは、パナソニックシンガポール研、NTU Singapore(南洋理工大学)と共同開発した顔認証技術に関する論文が画像認識分野のトップカンファレンス「ICCV 2023」に採択されたことを今月10日に発表した。今回、ディープラーニングにおける「パーティション学習」手法を顔認証に初適用したという。

同手法を顔認証分野における既存アルゴリズムと組み合わせた評価では、人種ごとの精度を検証可能な評価データセットMFR(マスク着用顔認証)でアフリカ系・白人・南アジア・東アジア人の平均エラー率を削減し最高精度を達成した。性別ごとの精度を検証可能な評価データセットCelebA(大規模セレブ顔画像)でも、女性の本人受け入れエラー率の削減に成功した。

上記新たな顔認証技術を用いて種々の属性に共通して有効となる顔認証モデルを学習することで、データ量が少ない特定人種・女性での認証精度低下の抑制を現実化した。新技術は冒頭の問題の解決にも寄与できるはずだという。同社は引き続き、「少数であること」などの理由で権利が守られていない状況に対して、妥協できない「人権」の問題として取り組む。

自社提供する様々な顔認証サービスに今回の研究成果を展開しつつ、公平性の改善に向けた技術開発を継続していく。そして、すべての人にやさしい顔認証、あらゆる人が安心安全で幸せに暮らせる「ウェルビーイング」の実現を目指していく構えだ。