エネルギー
循環経済プロジェクトを事前評価する行動シミュレーションモデル登場
環境負荷と廃棄物発生を低減し、素材や製品の価値を有効活用する。サーキュラーエコノミー(循環経済)の取り組みは、脱炭素化への貢献が期待されている。昨今、多様な耐久消費財についても、サーキュラーエコノミー施策の導入が模索されている。
GHG排出量の低減等ではリバウンド/バックファイア効果の懸念が指摘されている(参考記事)。ISOでも検討中の循環性評価は、特に製品レベルの取り組みにおける方法論が未確立である。同経済の普及や環境対策で鍵となる消費者行動については従来、その多様性やダイナミックな行動変容を考慮した環境影響の評価が困難だったという。
NIES資源循環領域と東京大学大学院工学系研究科の研究チームは、サーキュラーエコノミーの取り組みを事前評価する消費者行動シミュレーションモデルを開発した。シェアリング、リユース、リペアなど7種類の循環経済施策に「エージェントベースシミュレーション」手法を初適用。同手法の最大の特徴は、必ずしも経済合理性に従わず、クチコミなどの影響を強く受け、人によって好み等が様々な消費者行動を反映できる点だという。
研究チームは、当該モデルを用いたケーススタディにより、施策導入に伴う30年間にわたる将来の環境影響(GHG排出量等)と循環性(廃棄物発生量など)を推計することに成功した。これを広く活用することで、サーキュラーエコノミーの取り組みが実社会に広く普及する前の早い段階で評価を行い、脱炭素・循環型かつ消費者に広く受け入れられる製品やサービスの設計、それらを後押しする政策立案の支援につながる。
将来にわたるダイナミックな消費者行動の変容を踏まえたライフサイクル環境影響を定量化することから、UTLCA提唱の先制的LCA確立に消費者行動観点から貢献するものだという。研究の成果は『Resources, Conservation and Recycling』に掲載された。