独自のAI系"野外画像解析システム"にて、植物の環境適応性を解明

地球環境の変動による食糧生産への影響が危惧される。近年、野外における植物の環境応答の研究が重要視されている。分子メカニズム研究のモデル植物、シロイヌナズナ属では野外研究例が特に不足。多様な環境条件を網羅できる大規模データ収集の実現が望ましいが――

環境応答遺伝子の発現や代謝物の変化を捉える、大規模かつ人手による試料の破砕・抽出・計測作業は容易でないという。横浜市立大学木原生物学研究所エルピクセル筑波大学チューリッヒ大学農研機構ヒューマノーム研究所京都大学生態学研究センター東京大学金沢大学の研究グループは、AIによる野外画像解析システム「PlantServation」を開発し、色素量の変動を指標として植物の環境応答を解析できる手法を確立した。

牧野富太郎博士が名付けたタチスズシロソウなど進化学的に興味深い4種の画像を400万枚以上収集・解析し、種間交雑に由来する植物(異質倍数体)が様々な環境に適応する頑健性をどのように示すのかを解明した。深層学習によるセグメンテーションを利用して植物部分の自動認識に成功。さらにその色情報からアントシアニン色素量を推定する機械学習を用いて、画像データセットから色素の時系列変動が捉えられた。

今回、気温・日射量・降水量などに応じて系統ごとに異なる応答パターンで色素量を調節していることがわかった。気温と日ごと色素量変化の相関について詳細で定量的な環境応答パターンを、野外の植物にて初めて解明した。シロイヌナズナ属のタチスズシロソウは、特定の季節や環境下では親種のうちどちらか一方と似た環境応答パターンを示すが、季節や環境が変われば他方に似たパターンを示す、複雑な組み合わせになっていることが判明した。

同システムは低コストかつ汎用性が高く、コムギなど作物への応用が期待されるという。研究グループの成果は国際科学雑誌Nature Comに掲載された。