スマホアプリとAIで船の喫水をリアルタイムかつ正確に自動計測

石炭、鉄鉱石、穀物、木材チップなど、固体のばら積み乾荷物をドライバルクという。それら生活ないし産業活動に不可欠な原材料を輸送する、ドライバルク船は、積載した貨物の重量算定のために喫水(船底・水面間の鉛直距離)を測る。本船乗組員やサーベイヤーが自らの眼で行っている――

目視での喫水計測は可能だが、従来、港によっては波浪の影響を受ける錨地での荷役であるため、熟練の海技者であっても喫水計測の精度に想定以上の誤差が生じる場合があったという。川崎汽船は、TISおよび澪標とともに、スマートフォンで撮影した画像からAIを活用して水面とドラフトマークを認識し、画面上に波の影響を排除した喫水値をリアルタイムで表示させることで正確な喫水の計測をサポートする喫水計測アプリケーションを共同開発した。

「深層学習の技術により、精度の高いドラフトマークと水面の検出モデルを構築」「画像検出から座標計算により喫水を計算するアルゴリズムを開発」「連続して計測した喫水から平準化などの工夫により正確な喫水を最終的に計算」「スマートフォン対応のアプリで、かつ端末ローカルで処理が完結することによって、ネット通信利用不可の海上でも使用可能」といった特徴を備えた。新たな仕組みについて、7月末に3社共同で特許出願もした。

今般共同開発した喫水自動計測アプリケーションは、TISと澪標の「AI・データ分析サービス」を活用し、スマートフォンとAIを組み合わせることで、これまで海技者の経験に頼っていた喫水計測をAIで補完し、安全運航レベルの均質化・積高最大化に寄与するという。

川崎汽船は、昨年5月に公表した中期経営計画における事業戦略を実現するための機能戦略として、デジタライゼーションを推進しているとのこと。データやデジタル技術の活用により、安全・環境・品質のコアバリューを磨き上げ、競争力および企業価値向上を図っていく構えだ。