シニアカーなどのマイクロモビリティが注目されている。その誤操作による事故防止や介助者の負担軽減に資する、目的地までの自動運転の導入が一部で始まっている。だが現状、安全動作のために多数のセンサーやカメラを取り付ける必要があるうえ――
無線通信品質の変動により正常な遠隔監視・制御が困難になるなどの課題が、自動運転を導入する際の障壁になっているという。芝浦工業大学とNECは、さいたま市後援のもと、センサー・カメラ・AI等を活用し複数の自動運転シニアカーを遠隔監視・制御する実証実験を、さいたま新都心駅周辺の歩行者デッキと商業施設で11日~15日に行う(同デッキは手動運転車の遠隔監視のみ)。
施設内のLiDAR(光検出&測距)センサ情報とカメラ映像、車両のカメラ映像を統合分析し、自動運転シニアカー2台を遠隔監視・制御する。「アプリケーションアウェアICT制御技術」を活用してカメラ映像内の分析すべき重要領域を予測・抽出し、重要度、データ量、通信品質の状況に応じて分析処理をシニアカー搭載の小型コンピュータとクラウドに動的に割り振る。
同技術により、混雑エリアの状況を即時かつ高精度に把握しての適宜アラート通知や緊急停止が可能となる。当該シニアカー向けに周囲の人物の影響の有無を判定する映像分析AIを開発することで、過度な安全配慮による頻繁な停止を防ぎ、効率的な自動運転を実現する。これらは既存シニアカーに、カメラと映像処理・通信用小型コンピュータを搭載するだけ導入できるという。
芝浦工大は自動運転シニアカーの実用性を高め、LiDARを遠隔監視に応用した研究を提案。同大学発ベンチャー企業ハイパーデジタルツインへの技術提供を行う。一方NECは同実証で得られる知見を活かし、商業施設、鉄道、空港などの運営事業者や、公共施設を運営する自治体などへ、自動運転車両の運行監視システムやサービスを提供していく考えだ。