建設業においては労働時間の削減と生産性の向上が喫緊の課題となっている。また、鉄道関連施設など新築工事完了後も繰り返し改修・改築が行われてきた施設では、新たな工事に着手する際、過去の改修・改築工事を全て反映した現況の実測図を作成する必要があり――
そのための映像撮影では従来、技術者が慎重に作業を行っても撮影漏れが生じたり、建設現場における足元の不安定さにより映像がブレたりといった理由で撮り直しを強いられ、大きな負担になっていたという。竹中工務店は、四足歩行ロボット「Spot」（米Boston Dynamics社製）が建設現場内を巡回して撮影した映像を、実測図の作成用データとして用いる実証実験を行った。
Spotは現場巡回、施工状況の遠隔確認と記録、軽量資材の運搬への活用効果がすでに実証されている。今回新たに、鉄建建設とともに「JR新小岩駅南口駅ビルの新築工事」で実施した実験により、業務を効率化できることを確認した。Spotの活用シーンを建設現場における実測図作成（CalTa社のデジタルツインアプリ「TRANCITY」を利用）の補助業務に拡大できることが分った。
階段や不整地でも障害物を回避しながら指定ルートを自律巡回できるロボットの頭部に市販カメラを搭載し、ブレや漏れのない映像を撮ることにより、所要時間が最大30%程度削減された。今回作成した実測図（点群データ）は、設計図（BIMデータ）との重ね合わせを行い、新たに建設する施設や設置する設備配管等と既存構造体等との干渉を事前にチェックし、不具合が生じないことを確認する施工管理でも業務の効率化に寄与しているという。
同社は今後も、建設現場における作業空間のデジタル化や安全性向上技術など、Spotの更なる活用方法の実現を目指した研究開発、ならびに墨出しロボや搬送ロボなどRX（ロボット変革）による生産性向上施策の普及展開を図っていく構えだ。