情報通信
超高速・超大容量、第6世代移動通信システムの実用化に向けて
近未来の移動体通信、「6G」では300GHz帯の電波を活用した高速性が期待されている。当該電波は伝送帯域幅が広いけれど、伝搬損失が大きい。課題克服のため、受信端末方向へ電波エネルギーをまとめて放射するビームフォーミング技術が検討されている。
同技術は、28GHz/39GHz帯の5GシステムにおけるCMOS-ICで達成されてきた。300GHz帯において、同ICだけでは出力不足だからIII-V族化合物ICとの組合せでそれを成し遂げようとしても、接続部等で生じる大きな損失が高出力化を阻害する。ゆえにビームフォーミングによる高速無線データ伝送はまだ実現されていないという。
東京工業大学工学院電気電子系(岡田ラボ)とNTTは、300GHz帯のフェーズドアレイ送信モジュールを開発し、1次元ビームフォーミングを用いた高速無線データ伝送に世界で初めて成功した。この技術により、移動端末へ超大容量データを瞬時に転送できるようになるとした。
前者は周波数変換/制御回路等を搭載した高集積CMOS-ICを作製し、後者は独自のインジウム・リン系ヘテロ結合バイポーラトランジスタ技術で高出力パワーアンプ回路とアンテナの一体型InP-ICを開発。両ICを同一基板上に実装した4素子フェーズドアレイ送信モジュールを実現した。同モジュールは36度の指向性制御範囲と、最大30Gbps/50cmを達成した。
6G適用分野であるKIOSKモデルやFemtocell(超小型基地局)等の近距離移動体通信への展開が望める。今後、2次元アレイ化による2次元ビームフォーミングの実証や、アレイ数増による通信距離の拡張等を行う。利用用途に応じた受信モジュールの開発にも取り組み、従来比10倍以上の伝送容量を有する無線通信の実用化をめざすという。両者は、上記技術の詳細について、米国における国際会議IMS2023にて発表予定とのことだ。