デジタルツインにて大規模構造物の損傷位置・サイズをほぼ精確に検出

経年劣化が進行する橋梁などの道路構造物において、5年に1度の定期点検が義務化されている。日本では、全国73万の橋梁を点検する必要があり、地方公共団体の管理下にある橋梁は全体の9割を占めるが、市区町村ではそれを実施できる土木技術者が皆無あるいは不足している。

国交省「道路の老朽化対策」においてその現状と課題、取り組み等が紹介(同省PDF)されている。橋梁の維持管理については、現地での点検作業以外にも、過去の点検結果と各損傷の対応付けのため、損傷の位置やサイズを記録することに多大な労力を要し、点検業務を効率化する新技術が求められているという。

NECは、橋梁やダムなどの大規模構造物3Dデータと過去の点検画像を組み合わせてモデル化することで、損傷の位置やサイズの変化検知と進行予測を可能とする技術を開発した。数センチの誤差で損傷の位置とサイズを検知することが事前検証にて確認できた。同技術について、6月から豊田市と共同して、同市内の橋梁で実証実験を行う。

新開発技術では、現実空間の事象をデジタル空間に再現するデジタルツインを活用し、当該空間に建造物の実寸大3Dモデルを構築。レーザー光を活用して距離や形状のセンシングを行うLiDARを用いて計測した建造物の3Dデータ(点群データ)と、異なる位置や角度から撮影した過去の画像を照合・解析することで、損傷の位置やサイズの時系列変化を3Dモデル上で検知、かつそれらを自動記録する。

さらに、過去の画像から現状の損傷の進行程度を数値化し、時系列変化の傾向から将来の経時変化を予測可能とする。そのため、例えば補修時期判断に役立てられ、現地での点検業務の効率化にも貢献するという。今般開発した技術を強化する。同社は、2025年度を目標に、橋梁の管理者や点検従事者向けの(上記技術)製品化を図るとともに、橋梁を含むインフラ施設管理全般のDX推進に取り組んでいく考えだ。