「IKEA効果」と呼ばれる認知バイアスはコト消費と深く関連していることが分かっている。今回我々は、同効果の認知メカニズムを脳機能の観点から検討したという。中央大学理工学部人間総合理工学科/研究開発機構の共同研究グループは、光を用いた非侵襲の脳機能イメージング法である機能的近赤外分光法(fNIRS)を利用して、「コト消費」における価値判断時の脳機能を可視化し、効果を定量化することに成功した。
商品を組み立てる体験(DIY経験)をした「DIY条件」のWTPは、商品を組み立てない「Non-DIY条件」よりも高いという仮説を立てた。そして、学生30名にDIY経験有・無の条件を作り、各製品写真を見せてWTPの評価をしてもらった。同時に、評価中の脳機能をWTPの評価や愛着、記憶の呼び出しに関連する前頭前野を中心に計測した。結果、DIY条件の方がNon-DIY条件に比べて左背外側前頭前野/前頭極の活動が優位に大きかった。
当該脳領域は強い印象を伴う出来事を呼び起こす際に活動する。よってIKEA効果のメカニズムに関連する脳領域として妥当なものである。これにより、今回観察された同効果の脳内表象ではDIY経験によって製品への強い印象が生じ、WTP計測時に製品写真を見ることでDIYの短期的な記憶が想起された、ことの反映だと推測した。
DIYのような体験を基にした消費の価値判断を脳機能計測によって定量化したことは、fNIRSを活用した「コト消費」のニューロマーケティングの発展に寄与するだろうという。研究グループの成果は『Frontiers in Neuroergonomics』に掲載された。