計算化学に量子コンピュータを用いて革新的材料の開発へ

材料開発は、研究者が過去のデータや経験を基にする。所望の物性値を持つと期待できる分子構造を設計し、実際に合成、物性値の測定などを繰り返し行うことで、有望な化合物を探索する。当該プロセスは時間のかかるものだったが、近年、機能発現のメカニズムなどを解明する計算化学とか――

AIなどが膨大な材料データを効率的にスクリーニングするマテリアルズインフォマティクス(MI)などの新しい手法を活用することで、研究開発の加速が図られるようになってきた。最近では、量子コンピュータの研究分野における活用も始まり、計算化学に量子コンピュータを用いれば複雑な分子に関しても高速・高精度に計算できる可能性がある。量子コンピュータで計算した分子の構造や特性値は、MIにとっても重要な学習データとなる。

そしてスクリーニングの際の探索領域が格段に広がることが期待されるという。凸版印刷大阪大学QIQBは、量子コンピュータを活用した材料開発・評価手法に関する共同研究を今年3月に開始した。同研究では、前者が研究・開発に取り組む材料や製造プロセスの課題に対して、量子コンピュータを活用した材料の物性値予測や様々な化学反応の解析シミュレーションの演算を行い、量子化学計算アルゴリズムの開発と実証を行う。

量子化学計算アルゴリズムを量子コンピュータに実装し、各種演算を実施し、材料開発手法も確立する。このたびの凸版印刷とQIQBとの共同研究は、JST共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT:制度概要解説PDF量子ソフトウェア研究拠点における共同研究の一環として行われるものだという。

両者は、量子化学計算アルゴリズムを開発し、量子コンピュータを活用した材料開発・評価手法を確立し、革新的な新規材料の創出を目指す。さらには、材料の研究開発DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、産業と技術の発展に貢献していく構えだ。