小型・低消費電力かつ高感度の赤外線イメージセンサを社会インフラに

人やモノからの赤外線を電気信号に変換して情報を得る。暗闇でも機能するイメージセンサは自動車のナイトビジョン、航空機の航行支援システム、防犯カメラなどで活用されていて、極低温で動作する「冷却型」と常温付近で動作する「非冷却型」とがある。

前者は高感度で応答性に優れるけれど、冷却器を要するため大型・高価で電力消費が大きく、冷却器の定期メンテナンスも必要となる。一方後者は、冷却器不要で小型・安価・低消費電力といった特長を有するが、冷却型に比べて感度や解像度が劣っていたという。

NECは、独自開発した抽出技術による高純度半導体型のカーボンナノチューブ(CNT)を赤外線の検出部に適用した「高感度非冷却型赤外線イメージセンサ」の開発に世界で初めて成功した。単層CNTに含まれる、温度に対して抵抗値が敏感に反応する――常温付近で抵抗温度係数(TCR)が大きくなる――半導体型CNT薄膜を用いた同センサをものにした。同社は1991年にCNTを世界で初めて発見した。

それ以来、ナノテクノロジーを牽引する多様な研究開発を進めてきた。今回新開発したイメージセンサはそれらの実績・ノウハウにより実現したもので、酸化バナジウムやアモルファスシリコンを用いたセンサの3倍以上の高感度化を達成。従来の「非冷却型」に採用している熱分離構造と、同構造用のMEMS素子化技術、印刷トランジスタ等で培ってきたCNTの印刷製造技術を融合して、新たなデバイス構造を具現化――

それらをアレイ化した640×480画素の高精細な非冷却型赤外線イメージセンサの動作に成功した(開発ストーリー)。同センサの'25年実用化をめざす。今般の成果の一部は産総研との共同研究あるいは防衛装備庁安全保障技術研究推進制度の支援によるものだという。同社は当該イメージセンサを一層高度化し、多彩な社会貢献に資する製品・サービスの研究開発を進めていく考えだ。