医療DX、造影CT画像とAIにて膵臓の腫瘤および間接所見を検出

膵臓がんは、初期に自覚症状が出にくく早期発見が難しい。腹痛や体重減少などを自覚した段階では、周辺組織への浸潤を伴う進行がんとなっているケースが多い。がんと診断されてから5年後の相対生存率は12.5%で、がんの中で最低であることが示されている――

がん研究振興財団の『がんの統計2022』(PDFがん情報サービス)によると、同疾病での国内死亡者数は増加傾向にあり、2020年には3万7千人超で肺・大腸・胃がんに次ぐ第4位。予後の改善には早期発見が極めて重要だが、初期の小さながんは画像検査で描出されないこともある。ゆえに膵臓がんの直接所見である腫瘤だけでなく、膵臓の萎縮や膵管の拡張・狭窄などの間接所見にも着目することが大切である。膵臓は形状が複雑で――

解剖構造の把握も他の臓器に比べて難しいため、膵臓がんの診断には高度な専門知識を要するという。富士フイルム神戸大学は、AI技術を活用して腹部の造影CT画像から膵臓がんが疑われる所見の検出を支援する技術を共同開発した。両者は膵臓がんの早期発見に資する"CT画像×AI"技術開発を目標に、21年8月より同大学大学院医学研究科教授らのチームのもとで共同研究を進めている。

そして今回、膵臓がん患者を含む約1,000症例の造影CT画像をAIに学習させ、上記支援技術の開発に成功した。膵臓がんの間接所見も検出する。医師の負担を軽減し、より精度の高い診断につながることが期待される。この度確立した技術を応用し、一般的な検診や人間ドックで撮影される非造影CT画像からも膵臓がんが疑われる所見を検出するAI技術の開発を進める。

いずれ膵臓の腫大や萎縮などの軽微な形状変化を検出し、膵臓がんに罹患するリスクの高さを評価する技術の開発にも取り組んでいく。両者は、これらの技術で潜在的な膵臓がん患者を拾い上げ、早期治療による予後の改善と患者のQOL向上を目指していく考えだ。