秘匿化データで企業間連携及び分析、MIを生かし材料開発を加速する

マテリアルズ・インフォマティクス(MI)とは、機械学習などのAI技術を応用して材料開発の効率を高める取り組みである。それを2017年度から推進し、社内でのデータ連携・活用によって、短期間で新たな素材の開発につながる成果を多数上げてきた。一方、社外との協業においては――

材料開発に関する情報の機密性が高く、同業他社や川上/川下の企業間でのデータ連携が進んでいない。従来、企業間でデータを共有できないために最適な原料物性や組成などにたどり着くのに時間がかかり、開発期間が長期化することがあったという。旭化成と、NECは、「秘密計算技術」を活用し、企業間で共同開発を行う際にデータを秘匿したまま安全に連携できる分析基盤を構築した。

これにより、前者は秘密情報を扱うことが多い材料分野の製品開発において、原料サプライヤーや加工メーカー、部品メーカーなどの企業間で安全にデータ連携が可能となる。蓄エネルギー領域の研究開発において同基盤の活用を開始した、同社はこれまで培ってきた「MI」の技術の知見を活かし、企業間の壁を越えたデータ連携により、材料開発のさらなる加速に向けて取り組んでいく。

分析基盤は「NEC 秘密計算」のハードウェア方式(TEE)を活用。同方式は分析にかかる時間が比較的短く、幅広い分野で使われているプログラミング言語「Python」で記述された既存分析アプリを基本的にはそのまま秘匿化して動作させられ、難解な秘密計算のプログラミングが不要といった特長を有する。よって、原料情報や加工条件、評価情報など重要なデータを暗号化したまま統合し、MI技術を応用して材料開発シミュレーションを実行できる。

今後、実顧客との協業に向けた取り組みを推進していく予定だという。旭化成は、上記分析基盤について、生産計画の最適化など一層広い分野での活用や非競争領域における同業他社との連携も視野に入れている。