がん幹細胞をAIにて識別するテクノロジー、大幅な精度向上へ

がん幹細胞はがん組織にわずかに存在し、がんの生成や亢進に重要な関連があるとされている。その実態の詳細は未解明であるものの、可塑的かつ代謝や免疫に特異な性質を有し、がん治療に対する抵抗性に影響を及ぼしていることが明らかになりつつある。そのため――

がん幹細胞およびその維持を担う周辺組織を標的としたがん治療法の開発が期待されている。がん幹細胞は特徴的な発現の遺伝子やタンパク質を有し、その検出法はがん幹細胞の特定に重要な技術である。一方で、特異な細胞形態を有するとされる特徴の検出は、熟練した研究者の観察眼に負うところが大きく、技術開発は十分に進んでいないという。

東京工科大学応用生物学部の研究グループは、人工知能(AI)を用いたがん幹細胞の識別精度を大幅に向上させる技術を開発した。従来の生成系AIで予測した画像の精度が約6%だったところ、新技術では約40%(約5.7倍)の精度でがん幹細胞を予測することに成功した。比較的不得意な画像のみを集めて生成系AIに学習させたところ、従来手法が約90%の精度で出力するのに対して、新技術では約70%の精度となった。

がん幹細胞の性質維持を把握する手段として、マーカー遺伝子「Nanog」の発現を示す細胞画像を取得。その細胞形態の画像(約7000ペア)と共に学習させた生成系AIは、位相差顕微鏡画像の入力に対して、がん幹細胞を選別して表示した。学習用データ数や多様性に影響されず、正解画像と比べて出力画像が9割以上正しく表示する場合と1割程度しか一致しない場合があり、解析対象の画像によって得意と不得意があると考えられた。

同AIは、熟練が必要とされる高い識別能力を示したと考えられる。これらの技術をさらに発展させることで、がん診断をサポートするのに有用な手法としての応用が期待されるという。研究グループの成果は今月10日、オンライン学術誌「IJMS」に掲載された。