ものづくりDX、製造装置の制御をAIにて高速・高精度化

ものづくり現場では熟練技術者の高齢化による将来の技術力低下が懸念されている。当該低下を防ぐことが製造業における喫緊の課題となっている。近年、IT(情報技術)を様々なしくみに浸透させてより良い方向に転換していくDX(デジタルトランスフォーメーション)が各種現場で注目されている。

今月20日、フジクラは、製造装置の一部の制御にAI(人工知能)の一種である「深層強化学習」を実装するPoC(概念検証)を行い、その有効性を確認したと発表した。同社は2015年にAIの研究をスタートし、18年には画像認識・識別型AIを外観検査に適用――グループ会社の製造工程に導入し、検査工数の削減や生産効率の向上などを実現した。 そのうえで、AI活用候補として、装置の自動制御へのAI導入を検討してきたという。

今回、製造工程で実使用される、レンズの焦点を合わせる調心装置にAIプログラムを実装する形式で概念検証を実施したところ、AIが人や従来の制御プログラムよりも高速で高精度な動作を行えたことが確認できた。強化学習は、既存プログラムより6.7%精度向上かつ44.9%高速、人より1.0%精度向上、75.0%高速であることを実証できた。

AIによる機器の制御は類似の事例が少なく、他の製造工程での応用も期待されることから、このたび適用の有効性が確認できた意義を、世界No.1AI技術カンファレンスである「NVIDIA GTC 2023」で23日に発表することとなった。つまり、「AIの技術やノウハウを独自に蓄積して、製造工程上の制御装置でAI活用を検討」、「当該活用により人や従来のプログラムを上回る速度と精度を確認」――

「様々な製造現場に応用が期待されるAIについて世界有数の国際カンファレンスで発表」が今般の発表のポイントだという。同社はこれからも、継続的に社会課題の解決に向けた技術開発を進めていく構えだ。