クラウドと3種の深層学習モデルで切羽観察業務を半自動化、省力化へ

山岳トンネル工事では、掘削直後の切羽状況を所定項目ごとに評価・記録する。切羽観察が日々実施されている。観察記録の完成には業務効率と安全面に課題があった。よって現場において――

新技術導入促進(Ⅱ)型工事(国交省PDF)として「AI等を活用したトンネル切羽の地山判定手法について」(関連資料PDF)を提案し、深層学習の一種である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を切羽写真に適用することの有効性を確認していた。が、深層学習による観察業務の自動化は判断の根拠を示すことが極めて困難であり、適用に向けた再検討が必要だったという。

飛島建設は、深層学習を「作業者を補助する技術」として適用し、切羽観察業務を半自動化して省力化することを目的とした、トンネル切羽観察システム:Auftakt for Tunnel Faceを開発した。同システムでは動作過程で画像を入力とする3種類の深層学習モデル――①敵対的生成ネットワーク、②物体検出ネットワーク、③画像識別ネットワークを組み込んでいて、切羽全体を撮影した写真を用意するだけで自動的に観察記録が生成される。

当該記録に必要な情報をアップロードするツールとして、Microsoft Power Platformを適用。スマホやPCで操作可能な入力アプリをPower Appsで構築。クラウドストレージと連携するPower Automateフローを自社開発し、導入・更新・利用時に円滑・安定的に動作するシステムとした。

観察者の操作は写真のアップロードと自動作成された記録の修正の2つだけに圧縮され、作業量の大幅な軽減が期待できる。北海道の導入現場で大幅な時短効果を確認したという。同社は実装対象を拡大中で、各CNNの汎用性向上を目的としたデータの収集を推進。同システムの開発過程で得られた知見を応用し、切羽写真撮影時の安全性向上を目指した技術開発を行う考えだ。