物流・生産ロボティクス、"世界モデル"と柔軟性で作業効率アップへ

単純作業の自動化が進んでいる。ハンドリング作業ではしかし、扱う物品の形状・配置などが多様で、それらを網羅的に事前学習するのに数ヶ月かかったり、物品や作業レイアウトが頻繁に変わることもある。そのため、ロボット導入は一部のハンドリング作業に限定され、多くの現場では人手に頼っている。

人間は経験と蓄積した常識に基づき、この先どうなるかを想像して適切に行動できるが、同様のことをロボットで実現するには、それら常識を網羅的にプログラムする必要があり、ロボットの自律制御における大きな課題となっている。現在、国内外で盛んに研究開発されている"世界モデル"は、ロボットが実世界の構造や常識を理解して、将来を想像しながら行動を決定する、自律制御実現のキー技術として期待されているという。

NECは、物流倉庫や工場などでの作業内容やレイアウトの頻繁な変化に柔軟に対応できるロボット制御AIを開発した。世界モデルをハンドリングに応用したもので、試したことのない作業条件でも失敗の少ない最適な動作を自律生成し実行できる、世界初の技術だという。この技術の活用により、人手に依存していた現場へのロボットの導入を促進し、生産性の向上や働き方の改革に貢献する。

ロボット制御AIは、学習したものと異なるサイズ・形状で不規則に置かれた物品をも、的確につかんで所定の位置と向きに正しく置くことができるようになる。①実行時の作業条件に応じて成功率の高い動作を生成(現場で起こりうる作業条件の網羅的な学習なしに、そこで活用可能なレベルの安定性である約95%の作業成功率が達成できることをシミュレーションで確認した)、②短期間での事前学習を特長とする。

今後、物流・生産現場などのロボット作業で同技術の検証を進め、2024年度中の実用化を目指す。同社は当該技術の一部を昨秋、ロボティクス分野のトップ国際会議「IROS 2022」にて発表した。