自然災害によるCO2排出の抑制量をカーボンクレジットにする

自然災害が激甚化・頻発化している。社会経済面でも世界中に大きな影響を与えている、自然災害においては森林火災時のみならず、津波や洪水などによる被災後のインフラ・建築物の再建等でも大量のCO2が排出されている。

世界でのCO2年間排出量約335億トン(JCCCAデータ)のうち10%以上がそれら自然災害による影響とされている。そこで、再エネの導入や省エネ対策によって温室効果ガス(GHG)の排出を削減・抑制する「緩和」への対応だけでなく、気候変動の影響に備える「適応」への対応も脱炭素社会に向けた取り組みとして重要になっている。現在、炭素の含有量に応じて税金を課す炭素税や、国や企業ごとに定めたGHG排出枠を取引する――

排出量取引制度が欧州から各国に広がりを見せる一方で、自然災害による将来のCO2排出を想定した抑制量に対するインセンティブの仕組みの検討が進んでおらず、企業や政府、自治体などによる防災・減災を目的とした先進技術の開発やインフラや建築物の整備・導入、それらを下支えする積極的なESG投資(参考:GPIFウェブ)に繋がりにくい状況にあるという。

NEC慶應義塾は6日、産学連携を通じたオープンイノベーションによる脱炭素社会の実現に向けて、防災・減災による将来のCO2抑制量を算出・可視化し、金融商品化することで市場取引を実現する新たなアプローチ「潜在カーボンクレジット」を共創し、社会実装に向けて推進していくことを発表した。同アプローチにより、ESG投資の促進と防災・減災対策を目的とした投資の活性化に貢献していく。

両者は今後、防災ソリューションの拡充、CO2抑制量の客観性・透明性を確保するための研究、カーボンクレジット市場取引を実現するための金融商品化の整備などを加速するため、業種・分野の枠を超えた企業や大学、行政府等のパートナーを募り、2023年度のコンソーシアムの設立を目指す。