情報通信
世界初！28GHz帯の5Gとマルチセクタアンテナで無線ビーム制御
大容量・高速通信に資する高い周波数帯の電波は直進性が強く、減衰しやすい。広範囲に届けることが難しく、全方向へ電波を届けるには4つ以上の基地局アンテナを要した――が、マルチセクタアンテナでは1つで対応可能となる。
マルチセクタアンテナは、360度全方向の空間を複数エリアに分け、1筐体から各エリアへ同時かつ独立に電波を送受信する。指向性アンテナ素子を放射状に12個配置した、テレビ放送等で用いられる八木・宇田アンテナを高周波数帯に応用したものは、屋内を高周波数帯の電波で全方向にエリア化する際、多素子の平面アレーアンテナを複数用いる必要があり、付随する回路規模が増大し、消費電力や設置性に課題があったという。
横浜国立大学、ドコモ、日本電業工作、富士通は、共同でマルチセクタアンテナを実装した5Gマルチセクタアンテナ屋内基地局装置を開発し、28GHz帯（参考：総務省PDF）の電波を用いた通信の実証――5G基地局装置にマルチセクタアンテナを実装しての無線ビーム制御は世界初だという、実験に成功した（実施概要PDF）。同装置は回路規模を従来の約1/10に低減し、低消費電力・小型化を実現する。
高いアンテナ利得を全方向にて実現するマルチセクタアンテナと5Gで標準化されているビーム切り替え技術を組み合わせることで、低消費電力・小型化を達成。同装置の同アンテナを天井に設置することで、一層少ない基地局で高周波数帯の電波を部屋の隅々まで届けられ、通信環境の改善に貢献する。今後、多様な環境で実証を行いながら、アンテナ部分の回路実装を進め、低コストでのエリア構築が可能となる基地局装置の実用化をめざすという。
4者は5G Evolution & 6Gに向け、ミリ波・テラヘルツ波などの有効利用および屋内での電波のつながりやすさに取り組んでいる。上記実験内容は「docomo Open House'23」で披露される。