再エネアグリゲーション、時間前市場取引をAIにてサポート

世界でカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みが加速している。日本国内ではFIT制度が終わりを告げ、2022年4月にFIP制度が導入された。

FIP制度の活用にあたり、電力市場取引では、再エネ発電事業者が発電量の変動による「インバランスリスク」と市場での価格変動などの「マーケットリスク」を管理して安定的な収益を確保するニーズが高まっている。収益の確保には、太陽光や風力などの複数の再生可能エネルギー(再エネ)発電事業者による再エネ電源を束ね、電力市場における最適な売電計画を実行する再エネアグリゲーターの役割が不可欠だという。

東芝は、再エネアグリゲーション向けに、「電力市場取引戦略AI」の拡張機能として、時間前市場において最適な"入札のタイミング"と"入札量"を算出する「時間前市場取引AI」を新たに開発した。同AIは、当日の天候や稼働プラントの状況に併せて電力の需給バランスを調整する時間前市場取引において、入札実行時点の最新の発電量予測と価格予測、過去の市場取引結果に基づいて、最適な入札のタイミングと入札量を算出する。

入札のタイミングが適切でないことで電力の需要量と供給量の差分が発生する「インバランスリスク」と、一度に大量の入札が発生することで価格下落を引き起こし収益が悪化する「マーケットリスク」を考慮し、取引収益が最大となるように最適化できる。同AIは、東芝エネルギーシステムズおよび東芝ネクストクラフトベルケが参加する経産省の再エネアグリゲーション実証事業での実証実験にて採用され、実際の発電設備を用いた活用を開始している。

同AIにより、従来は困難だった取引当日の発電量予測と価格予測に基づいた時間前市場取引の意思決定支援が可能になる。変動の大きい再エネの安定的な供給が可能になるという。東芝は、再エネの主力電源化の促進およびカーボンニュートラル社会の実現に貢献していく構えだ。