高臨場感+動的、可搬型音場シミュレータにて内観の仕上りを疑似体験

劇場やコンサートホールは高品位な音響が必要とされる。音響設計において竣工前に設計情報から完成後の音を予測・合成し、その音を再現して試聴可能にする技術を「可聴化」という。音環境は近ごろオフィス等でも注目されている。

これまで、音響面では設計段階から完成後のホールの響きを疑似体験できる自社開発の室内音場シミュレータ「STRADIA®」('11年記事)を活用してきた。また、完成後の建物の内部空間を疑似体験できるVRシステムを活用し、VR映像により顧客と建物完成後のイメージを共有してきた。竹中工務店は、建物の設計段階で、臨場感のある音響と内観の仕上がりイメージを同時に疑似体験できるVRを用いた可搬型音場シミュレータを開発した。

同シミュレータは、STRADIAによる音の再生とVR映像を同期させることで、あたかもその場にいるような臨場感のある音響と内部空間の仕上がりイメージを同時に疑似体験できるしくみで、2つの機能を有している。1つ目は、従来のSTRADIAの機能に加え、人の頭の動きや向きを常に追跡することで、より高い臨場感を得られる機能「高臨場感可聴化システム」、これは高品位な音環境が求められる劇場やホールに適している。

2つ目は、VR空間内を自由に動き回り、それぞれの場所での音を聞き比べられる新開発の機能「動的可聴化システム」(特許出願済)。劇場やホールほど高品位な音響を必要としないオフィスや店舗における人の動きや会話の音の聞こえ方を再現できる。いずれのシステムも、ヘッドホンとディスプレイとPCをつなぐだけの簡易な構成であり、持ち運びが可能で、どこでも容易に体験できるという。

同社は今後、上記シミュレータを活用することにより、様々な建物の設計段階において、顧客の持つ印象やイメージを共有し、その要望や意向をより的確に把握――。顧客のイメージに沿った音の環境を構築していく考えだ。