一方、AIでの進歩が著しい深層学習モデルにおいて、古典機械学習(現在普及しているML)は優れた推論性能を達成できるものの、所要計算規模が膨大なものとなるほか、学習データが限られる際に十分な性能を発揮できない課題があったという。三菱電機は、学習モデルを自動設計して最適化することで、計算規模をコンパクト化する量子機械学習技術を開発し、世界初だという、テラヘルツ・イメージングでの高性能化を実証した。
今回開発した量子機械学習技術は、従来の古典機械学習と組み合わせることで、電波のような高い透過性と光のように優れた直進性をもつテラヘルツ波(0.1~10THz)の特長を活かした物体の透視イメージングによる非破壊検査や、電波を利用して人の動きや室内環境を把握する無線室内モニタリング等の幅広い用途に適用できる。
少ない量子ビット数で多くの情報を同時に処理できる量子コンピュータの特性を活かして、古典MLと組み合わせたハイブリッドで協調的に学習することで、限られた学習データでもコンパクトな計算規模で十分な性能を発揮でき、学習にかかる計算時間の大幅削減が可能な量子機械学習技術を達成した。新開発技術が非破壊テラヘルツ検査、無線室内モニタリング、圧縮センシング、生体信号処理など複数の分野で高性能化に寄与することを確認した。
成果は国際会議GLOBECOM2022のTutorial Sessionにて紹介するという。同社は上記技術の開発をさらに進め、「Maisart®」を拡充――FA、空調、ビルシステム、モビリティなどの幅広い産業分野への活用を目指していく構えだ。