鉄スクラップ検収AI、ベテラン検収員レベルの査定・運用の実現へ

2050年カーボンニュートラルを宣言した。日本全体のCO2排出量の約14%を鉄鋼業が占めている現在、高炉法との比較で同排出量を75%以上削減できる電炉法による鉄鋼生産の拡大が求められている。電炉鋼材普及の鍵を握るのが、原料である鉄スクラップの品質管理だ。

脱炭素に向けた課題等が資源エネルギー庁Webで解説されている。今日、電炉メーカーにおいて、鉄スクラップは受け入れ時の現場検収員による高度な検品作業により品質を担保しているが、日々搬入される大量スクラップの正確な検品にはスキルが要求され、人手不足や熟練工の高齢化といった社会課題への対応も求められる。様々な課題をAI開発で解決していくという。

EVERSTEELは、朝日工業と、鉄スクラップ検収プロセスの高効率・高精度化に向けた5ヶ月間の検収AI開発の現場検証を完了した。検収員全員の査定結果と荷降ろしされるスクラップの検収作業を分析し、検収員による査定のばらつきを定量化した。今年11月、ヤード荷下ろし全荷受口へカメラ導入を実施し、品種・等級の判定、不適合品の検出においてベテラン検収員と同等レベルの査定が可能な本格運用AI開発を開始した。

同AIシステムにて、トラック1台分のスクラップに対する等級査定を実施。ヘビースクラップの査定において、検収員の査定精度のおよそ88%を達成した。ヤードで夜間撮影されたスクラップデータでも解析を実施し、深夜帯のデータでも問題なく等級分類が可能であることも検証した。不純物や、炉内にて急反応を引き起こす密閉物といった「異物」を検出――トランプエレメントの代表であるモーターについても、検出可能であることを確認した。

今後、新断・ダライ粉・シュレッダーといった荷受スクラップの全品種への解析拡大、フル機能AIの開発を行う。データ収集スピードを加速させることで、開発効率を一挙に向上し短期間での開発完了を目指すという。