船上業務DX、点検の標準化・記録・報告から海技伝承までクラウドで

船舶運航時の船上業務は、船毎や担当者毎でも差が生じやすい。限られた空間の中で、船員同士は「かたふり」と呼ばれるコミュニケーション手段(場は「かたふりどころ」)を用いて、身振り手振りも交えながら互いの経験や知識を語り合っているという。

商船三井は、同社全額出資のカタフリ社を設立し、船舶運航時の船上業務デジタル化のニーズがある企業向けのクラウド型船質管理「カタフリアプリ」の提供を今月2日に開始した。カタフリ社は、デジタル化の遅れや人手不足が課題となっている海運業界に対し、DXや船員の働き方改革に寄与するサービスを提供することで、産業全体を活性化させることを使命としている。

「カタフリアプリ」では、業務内容と手順を登録でき、作業後の報告もアプリにて一気通貫で行える。船員の業務負荷を軽減するとともに、抜け漏れやばらつきの防止、業務の効率化、データ上でのノウハウの蓄積・引継ぎ、フォローアップを可能にする。同アプリは通信環境の整わない船上であっても、事前にスマートフォン等の端末に所要データを読み込んでおくことで、通信途絶の際にも利用できる。

ニーズのある企業に同アプリを活用してもらうために今回、販売代理店として商船三井テクノトレードを起用――舶用品販売で培った営業ノウハウとネットワークにより営業活動を促進する。船員用語「かたふり」を社名としたことについては、海事産業に関係するすべてのステークホルダーが適切に知見やノウハウを共有し、バリューチェーン全体が活性化されることで、船舶運航を安全で快適にしたいという、創業者の強い想いが込められている。

新事業は、カタフリの代表者となる住田氏が商船三井グループ新規事業提案制度「MOL Incubation Bridge」(PDF)を通じて発案し実現させたものだという。商船三井は引き続き社員一丸となり、新たな発想と切り口で社会課題の解決に貢献していく構えだ。