光技術×AI、ハイパースペクトルカメラの実用化に向けて

環境から様々な情報をセンシングしてサイバー空間で分析・予測する。そこでは、人間の目を模倣した通常のカラー画像よりも多く詳細な色情報(波長)をとらえたハイパースペクトル画像――目で把握困難な被写体の性質を見分けられる――の利用が考えられる。

環境のセンシングによって、多様な価値を創出するサイバーフィジカル社会の実現に向けた研究開発をIOWN構想のもとで進めている。NTTは、革新的光学技術(メタレンズ)とAIに基づく最先端画像処理技術を密に融合することで、容易にハイパースペクトル画像を取得できるイメージング技術を開発した。

ふつうのデジカメのレンズをメタレンズに置き換えるだけで、ハイパースペクトル画像を取得できる。同技術により、従来カメラの大型化や解像度・フレームレートの低下をもたらしていたハイパースペクトルカメラ特有の構造や仕組みが不要となり、高解像度なハイパースペクトル画像の動画の撮像が可能になったという。

同技術を通常のデジタルカメラに適用し、HD解像度・フレームレート30fpsの条件下で、可視光から近赤外光に渡る波長バンド数45のハイパースペクトル画像の撮影ができ、動画撮影も可能であることを世界で初めて示した。人などの動体の撮影、ドローンなどの移動体からの撮影を高解像度な条件下で行え、被写体の性質を見分けられる。ハイパースペクトル画像は各種産業におけるスマート化への活用が期待される。

今回の取り組みにより、メタレンズとハイパースペクトル画像再構成技術を用いたハイパースペクトル画像の取得に関して、実機を用いて基本原理を確認した。同社は今後、コラボパートナーと連携してユースケースへの適用実験を通して、ハイパースペクトル画像の再現精度が十分であるかの検証、およびその結果を踏まえた技術の改良を進めて、実用化をめざすという。上記成果は、Road to IOWN 2022にて披露される。